PART1 犬と楽しく外出しましょう(8)

PART1(8) 犬と楽しく歩くための最初の第一歩
リードをゆるめて歩く練習をしてみましょう!


1. 「さあ、行くよ」と声をかけて練習開始です
さあ、では犬と歩く最初の第一歩、「リードをゆるめて歩く」練習をしましょう。
その前にまずは、練習をする場所のこと。
最初の第一歩の練習はリードを全部伸ばしてするほうが犬にわかりやすいので、周りに迷惑のかからない広い場所を選びましょう。
次に「リードをゆるめて歩くよ」という意味を、あなたと愛犬の共通言語として、合図の言葉を決めましょう。私の教室では「さあ、行くよ」あるいは「レッツゴー」と決めるクライアントが多いのですが、家族全員が使える言葉なら、なんでもいいでしょう。
では練習開始。「さあ、行くよ」と声をかけます。そしてリードを全部伸ばして歩き始めます。

2. 犬が引っ張ったら、練習の合図です
すぐに犬はあなたを引っ張りますね!
ええ、そうですとも。リードはピーンと張った状態ですよね。
この状態になったら、練習ができます。
ピーンと張ったリードを、どうやってゆるめるか、それをあなたが考えるのです。
ただしリードをゆるませようとして、次のようなことをしてはなりません。
その一つは意識的にあなたが力まかせにリードを引っ張ること。
二つ目は犬に引っ張られるままに、犬といっしょに進むこと。
三つ目は犬を叱ること。
さあ、それでは他にどうやってリードをゆるめることができるでしょうか?

3. 電信柱になりましょう
あなたがすることは、たった一つです。
電信柱になることです。
犬がどんなに引っ張っても、引きずられないように、そしてリードをわざと引っ張らないで、ただもう、その場で立ち止まっています。リードをそのまましっかりと握っているだけです。
電信柱ですから、しゃべることも犬に話しかけることもしませんよ!
大型犬など力の強い犬で、あなたが立ち止まって踏ん張っても引っ張られてしまうなら、家族と腕を組んで犬の力に負けないように練習するか、訓練用のカラーを使用して練習するといいでしょう。(犬に力負けしてしまう場合の練習は、次の機会に詳しくご紹介します)

4. ひたすら待ちます
そのままの状態で、ひたすら待ちます。何を、ですって?!
犬が「前に進めない」と気付いて前進しようとする力を抜くか、この状態にあきるか、この状態をなんとかしたくてあなたの方を見るか・・・理由はともあれ、リードがゆるむのを待つのです。それまであなたは電信柱に徹します。

5. リードがゆるんだら、そばへ犬を来させます
そのうち、なんらかの理由で犬のリードがわずかですが、ゆるみます。(犬がこの状態にあきてあなたに振り向くか、地面のにおいをかぐか、座りこむか、いろいろですが、そんなときにわずかにリードがゆるみます。なおこんなに待てない場合の練習方法は、またの機会にご紹介します)
この瞬間が、教えどきです。
リードがわずかでもゆるんだら、すかさず、あなたは楽しそうなトーンで犬の名前を呼んだり、楽しい声を犬にかけたり、ピヨピヨとなるボールを鳴らしたりして、犬があなたのそばへ、しかも左側に来るように仕向けます。
そうするとほら、犬があなたの方に向ってくると、もっとリードがゆるむでしょ!
このとき長く伸ばしていたリードを、そばに来る犬の歩調にあわせながら、なるべく犬があなたの左側に来るように、リードをたくしながら短くしていくと、確実にあなたの体の左側にリードがゆるんだ状態で犬が来ます。(リードを無理に引っ張ってそばに来させないでね)

6. 左側に来て、リードがゆるんだら歩き始めます
犬があなたの体の左側に来て、リードがゆるんでいますね。
犬を落ちつかせるために、すぐには歩きはじめないで、その状態で一呼吸待ちます。
こうしてまた(5)に戻り、(10)までのことを繰り返し練習します。

7. 根気よく続け、そして待ってあげる練習
ちっとも前に進めないと、ため息をつくあなたかもしれませんね。
でも、がんばってください。
散歩以外の時間でも、1日何度でも何度でも練習しましょう。1回の練習時間は、犬よりあなたの根気が続かないでしょうから、せいぜい5分~10分ぐらいでしょうか。
練習を重ねていくうちに、犬は自然に理解します。「首が苦しくなったら、飼い主のそばに行けば楽になり、しかも前に歩ける」と。こうして犬は「首が苦しくないよう歩いていれば、前に進める」と自主的に飼い主を引っ張らないで歩くようになります。
この練習はあなたにとって、根気のいる辛気臭い練習かもしれません。でも犬の首を締めて苦痛が伴うストレスを与えながら教える方法より、ずっと犬にやさしく、あなたの犬を扱う技術もいらず、しかもどんな性格の犬も、どんな年齢の犬でも、楽しく学習できるため、家庭犬とその家族にとっては、失敗しない練習方法です。
なお(8)と(9)で、ひたすら犬が気付くのを待つ方法だけで学習した犬は、自主的に学習したので、覚えたらしっかりと身につけられるようになります。
この練習を高度にしていくと、あなたが立ち止まるだけで、犬は自らあなたの体の左側に戻って待ち、あなたが望むのなら「おすわり」をして待ち、あなたが「さあ、行くよ」と合図を出すとリードがゆるんだ状態で、あなたといっしょに歩く犬になります。